悔しくて、でも妙に楽しくて・・

私のガラス制作は大学での宙吹きガラスから始まった。卒業後は作家の卵として長野県のあづみ野ガラス工房で4年間、宙吹き中心で研鑽を積んだ。 そこで勉強したのは、作品を通してどの様に社会と関わっていけるかを考える事、工房経営の感覚、そして制作活動は大きな喜びとどうしようもない孤独が共存するという事。

この4年間の貴重な経験が現在の私の基礎となっている。 技法が宙吹きから現在のバーナーワークに変わった経緯は、宙吹きの合間に小さな作品を作るのに好都合!という軽い気持ちで初めてみたバーナーワークがあまりに難しく、全く何も制作出来ない!それが悔しくて、でも妙に楽しくて・・・気づけばすっかりバーナーワークに転向していた。当時は、この技法を教える教室はほとんどなかったので、まずは設備と材料を購入して実験を繰り返した。宙吹きガラスの経験を無理やりバーナーワークに当て嵌めて失敗を重ねたり、高額な材料をケースごと無駄にしたり。そのうち購入した管ガラスも底を尽き、残った無垢棒でアクセサリーを作って手売りする日も長く続いた。沢山の無駄や遠回りをしたが、今になって考えれば無くてはならない貴重な経験だったと思う。

これまでは、バーナーワークの可能性を探る様に、様々な表現を試みて、引き出しを増やす事を意識して制作してきた。 今後は、じっくりと引き出しの整理をしながら、これまでやってきた事を更に深く研究していきたいと思っている。

ケーアンドケーデザインルーム 森﨑 かおる

はちみつ瓶・量産への挑戦 

原宿東郷記念館様より、自社製ハチミツを入れるガラス容器の制作依頼を承り、2013年よりスタートしました。
 
明治神宮やその周辺からミツバチ達によって集められた非加熱の生ハチミツは、とても香り高くて濃い!エネルギーが凝縮された様な味でした。都会でもこんなに美味しいハチミツが採れるのかと、強く感動した事を鮮明に覚えています。
 
このハチミツ「原宿のローハニー」は、季節ごとの花蜜のみで作られ、爽やかな甘さと花の香りが特徴なのそうだ。
 
 

「殖」シリーズ 2015

植物のイメージで制作してきた作品を、その枠を取り払い、よりシンプルで力強い表現にしていく事を目標に制作しました。

網ガラスのシリーズ

2~4mmのガラス棒を、熔かす・曲げる・溶着するの繰り返しで、下から上へ向かって編み上げる様に作っていきます。

【植物の類】シリーズ 2013

密集した棘の部分は凝縮された力を、膨らみ伸びていく形は広がりゆく力を、対照的に表現しました。

【inside】シリーズ 2012

【inside】シリーズ。これまでの四方八方に広がっていた突起を、内に向けてぎっしりと配置しました。管の部分は一つの空洞となっていて、突起部は塊状のガラスです。 2012年 個展 おかりや

【植物の類】シリーズ 2010

植物の密集する構造にヒントを得て、ボトルのデザインに使用しました。細かい表現に向いているバーナーワークだからこそ実現出来た作品だと思います。2010年 個展 松屋銀座

【breathe】シリーズ 2010

【breathe】シリーズ。ガラスを熱して柔らかくなったところへ息を入れて膨らます、これはガラス作りの基本です。バーナーワークでは、この場面が目の前10cm位の至近距離で繰り広げられるのです。2010年 個展 おかりや

「greenとともに」シリーズ 2007

植物を生けた時、ガラスがその植物と一体となって架空の植物に変化する、という考えで生まれた花器です。

バーナー初期作品

1994年にバーナーワークを独学で始めました。まず、バーナーワークでどんな物が作れるのか、全く知識がない中で、僅かな書籍を参考に、膨大な試行錯誤を積み重ねて自分なりの方法を見つける作業に取り組みました。

あづみ野時代

炉の中でドロドロに熔かしたガラスを、竿で巻き取って外に出し、固まるまでの間にイメージした形に仕上げて行く、その宙吹きという技法に深い魅力を感じて、楽しく試行錯誤していた時期です。